遺言のはなし~遺言を使った相続手続【相続人調査の必要性】~

掲載日:2020.01.15

遺言を作成する方法として、一般的には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、今回は自筆で作成した場合に注目したいと思います。

まず、遺言を作成することのメリットとして、①相続人間での余計なトラブルを防ぐことができる、ということとともに、②相続手続を簡略化することができる、という点があります。
前者は、遺言により相続人の話し合いが不要になるため、トラブルの可能性が減るということです。また、後者は、遺言により相続財産の取得者が特定できるため、相続人の調査(戸籍の収集作業)が不要になる、ということです。
公正証書で作成した場合は上記の通りだと言えます。ただし、遺言を自筆で作成した場合には注意が必要です。
それは、自筆の遺言を相続手続で利用する場合に「検認」の手続が必要であるということが関係しています。

自筆で作成した場合、まずは家庭裁判所で検認を受け、その後各種相続手続を行う、という流れになります。
遺言による相続手続では相続人の調査は不要なのですが、実は、その手前の検認の手続には相続人の調査が必要なのです。
つまり、遺言で本来省略できるはずの相続人の調査が、検認という別な手続のために必要とされるので、結局、自筆の遺言を使用する場合、相続手続は簡略化されていないのと同様ということになってしまいます。

もちろん、緊急の場合にすぐ作成できるなど、自筆で作成するメリットもあるのですが、上記のような違いもありますので、遺言を作成する際は、遺言を使用する際にどのような作業が必要になるかも含めて検討するとよいのではないでしょうか。

では、また次回お楽しみに!

司法書士 たつみ